どうも、 WooCommerce をいじり倒している田中です。
この記事はKUSANAGI Advent Calendar 2016 16日目のエントリーです。
他の皆さまが技術的なKUSANAGI が早いよ〜!と言う事を書かれているので、筆休めといいますか、「技術のこと分からんけど、KUSANAGI ってどういう場合に最適なの?」と言う事を、運営といいますか、経営などの視点から出来るだけ分かりやすく書いてみようと思います。
さてさて、「KUSANAGI = PHPのCMS系などが爆速になる」というイメージを多くの方がお持ちかと思います。はい。その通りです。ですが、他の選択肢がないの?と言いますと、それはもちろんあります。ですので、ネコも杓子もKUSANAGI が良いとはならないと思います。ですが、以下の2点で考える時には良いのではないかなと。
- サーバー構築及び運営費用をあまり出せない
- サーバー会社を限定できない
サーバー構築及び運営費用をあまり出せない
まず、爆速のサーバー環境にしたい場合に多いのが、そのサイト及びサービス独自にサーバー技術者などが付いて、独自にサーバーをカスタマイズしていくというパターンです。
それ以外にAWSなどに多いのですが、KUSANAGI のようなパッケージがあり、それを導入するというパターンです。
上記の2点は簡単に言うと、メリットとしては自由に色々とやることが出来ますが、デメリットは費用です。技術者を雇ったら人件費が掛かりますし、パッケージ使用料がかかるパッケージが多いです。(※もちろん、パッケージ費用のかからないものもあります。)
ということで、お金が湯水のようにあって、ガンガンやるんだ!という方々にはKUSANAGIは一つの選択肢でしかありません。
ですが、初期導入やスタートアップ、もしくはアーリーステージのビジネスをされている所では、サーバー運用費がそこまで出せないのは現実問題としてあります。そういう方々には運用・サーバー構築作業を含めコストメリットはかなりあるかと思います。また、適切なクラウドサーバーを選べばスケールアップもサーバーを変えること無く出来ますし、儲かったらKUSANAGI を開発しているプライム・ストラテジー様に直接サーバーの保守などのお手伝いしてもらうことも出来ます。
サーバー会社を選択したい
また、大手企業様では、色々な政治的な関係で使えるサーバーが制限と言うか限定されることがあります。「当社はMSと取引が多いので、Azureを使いたい」とか、「IBMでサーバー契約しているからIBMでの契約をしたい」とか「GMOとの取引が多いからGMO系のサーバーが良い」などなど、良い悪いは別として、そういう事が日本の大企業や中規模の企業ではよくあるのですが、KUSANAGI は多数のプラットフォームに対応しているので、融通が非常に効きます。
個人的な意見としては、クラウドサーバー系で技術などにおいて AWS がやはり一歩先を行っていると思っておりますが、現実問題としてこういうことがあるので、KUSANAGI は様々な企業内で提案しやすいサービスだと思います。(ちなみに、KUSANAGI は AWS でも使えます。)
と、ここまでが経営者的に視点での、KUSANAGI が良いんじゃないかなと思われる点です。書いています通り、上記のような条件の時に良いだろうということで、そんな条件が無ければKUSANAGI を選択肢の一つとして考えれば良いと思います。サービスにはそれぞれにメリット・デメリットがありますので。
次からは、ECサイトを運営する立場といいますか、私の本業というか WooCommerce に絡むKUSANAGI が良いんじゃない?という部分を書きたいと思います。
- ECサイトはキャッシュ処理でページ表示速度を上げたくない
- アクセス数よりもセッションやクエリー処理が気になるECサイト
- 手動でもスケール(メモリなどの増減)が出来ればとりあえず大丈夫かな?
ECサイトはキャッシュ処理でページ表示速度を上げたくない
ECサイトの場合、急な商品価格の変更や売れ筋商品ランキングなどリアルタイムに変更してそれを表示したいという必要があります。その時にキャッシュ処理がされていて、更新がされないというような事が起こると非常に困ります。ですので、キャッシュ処理をしなくても十分早く表示できるサーバーのほうが良いのです。
WordPressのキャッシュプラグインの中には、ページが更新されたらキャッシュを削除する処理などがされていることが増えてきて、価格変更などには更新作業をするので問題ない場合もありますが、商品ページで在庫を表示する場合やウィジェット的な部分などで商品ランキングなどを行うと、やはり全体としてキャッシュ無しで動かせた方が良いのです。
また、買い物カゴ(カート)処理や決済処理のページはキャッシュ化するとそもそも問題が発生するページがありますので、キャッシュ無しで早いというのは魅力的な部分なのです。
もちろん、KUSANAGI の機能の中にキャッシュ処理があります。ですが、そもそもの開発の経緯の中でキャッシュ処理をしなくても早く動かせる仕組みがなされています。これは、意外とECにおいては重要です。
ただ、もちろん商品ページの表示速度はECにおいては死活問題です。商品ページを表示するのに時間がかかる場合、商品購入の意志が弱くなるということは経験的にも、研究結果としても証明されていますので、商品ページの表示スピードは大事です。それにおいて、KUSANAGI のキャッシュ無しでの処理能力は十分だと思います。商品ページのコンテンツ内容にも寄りますが。
アクセス数よりもセッションやクエリー処理が気になるECサイト
そもそも、ECサイトはコンテンツサイトと比べてアクセス数が少なくても収益化が出来ます。
コンテンツサイトはPVを多数稼いで、その上に広告を表示したりアフェリエイトリンクを表示させることによって収益を出しています。ですので、広告クリック率が2%でワンクリックの収益が10円だったとした場合、10万円稼ぐためには50万PVが必要となります。
計算式:100,000円(売上)÷10円(ワンクリック)÷2% = 500,000(PV)
それに対してECサイトの場合は、平均顧客単価が6,000円で粗利率が40%で購入へのコンバージョン率が1%で平均閲覧PVが7PVだったとした場合は、約3万PVで大丈夫なのです。
計算式:100,000円 (粗利益)÷(6,000円×0.4)÷ 1% × 7PV = 29,166…..(PV)
あくまで、この数値はザックリとした一般的な数値を想定したものです。コンテンツサイトの状況や、ECサイトの取扱商品などによって大きく変わるのですが、一般的な感覚では大きなズレはないと思います。ということは、ECサイトの場合はアクセス数に耐えうるサイトよりも、カート処理が同時に沢山できるサイトが非常に大事な要素になります。そういう点でもKUSANAGI は十分な処理能力を持っています。
手動でもスケール(メモリなどの増減)が出来ればとりあえず大丈夫かな?
これは、アクセスの集中という問題です。ECサイトである話なのですが、福袋やセールのシーズンにはアクセスが集中してサーバーがダウンする事があります。ただ、常にアクセスを集中するかもしれない状態に備えていてはサーバーの運用コストが高くなってしまいます。ですので、売上が上がる時期だけサーバースペックを上げることが出来るサーバーであれば、サーバーの移行などをしなくてもスムーズにサイト運営することが出来ますので、メモリなどを増減できるパブリッククラウド系のサーバーを選べば非常に便利です。
もちろん、アクセス数などを判別して自動的にスペックを増減できるシステムも便利は便利ですが、運営者がサイト状況を把握しながらすれば、良いという点ではとりあえず増減処理がリアルタイムに出来ればそれでいいかな?と思います。
単純なアクセス集中シーズンに限らず、ECサイトというのはリピータ客を囲い込み売上を上げていく形を目指すことが多いので、中長期的にもサーバースペックを上げていくことが多いです。この場合もクラウド上でメモリなどをアップグレードしていくことが出来れば、サーバーの移転コスト等を考える必要がなくなります。
最後にECは継続運用できるシステムや環境が必要
そして、最後にKUSANAGIが EC サイトにとって良いと思われる理由の一つは、KUSANAGIはオープンソースライセンスです。ちょっと不謹慎な事を言いますが、万が一プライム・ストラテジー様が買収されたり方向転換をされたとしても、ユーザーが多ければオープンソースライセンスは多くのコントリビューターによって、大抵生き残ります。現在、ユーザーが増えている現状のKUSANAGIを見る限り、サービスの継続性はかなり高いのではないかと思います。
また、同様の理由で世界の30%のシェアのあるWordPress上で動き、ECサイトの30% を占め、Automattic が運営している WooCommerce は継続性の可能性が非常に高いので、是非ともECサイトを検討される場合は、WooCommerce 及び KUSANAGI のセットをご検討ください。
ちなみに、KUSANAGIとWooCommerceの関係は良いですよという記事はこちらを参考に。
と自分の関連するサービスを結びつけて、お後がよろしいようで。爆
最後に:私の経験上、サーバーやサービスは一概にこれが良いということは無いです。サイト及びサービス運営者の状況や条件・環境によって変わりますので、あくまで参考意見としてこの記事を御覧ください。